BIWA-YOU

『琵琶謡』とは、徒然を謡うこと。写真と、日々思うことを。      そして、できるならば詩や小説も書き綴りたいと思いつつ・・・。

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メイプルシロップを読み解こう

NHK全国学校音楽コンクール高等学校の部に行ってきました。
毎回のことですが、何よりも気になるのは課題曲の詞。
高校の部の詞を書いたのは、穂村弘氏。1962年生まれの現代短歌を代表する歌人。
課題曲のテーマは「ピース♪」。戦後70年で、平和を考え欲しかったんだとか。
で、高校の部の課題曲のタイトルは「メイプルシロップ」(詩は、最後に)

詩をどう読むかは、読んだ人の自由ですが、合唱曲は作曲者の意図も入ってくるので、曲想である程度意味が限定されてきます。なので、作曲者はこういう詞の読み方をしたのだな、を探るのが合唱の醍醐味でしょうか。

NHK全国学校音楽コンクールでは、多くの生徒さんが歌えるようにと、混声、男声、女声バージョンが作られます。穂村氏はそのあたりに配慮したのか、「恋人」という言葉が使っています。NHKホールでは女声と混声を聴いたのですが、女声の場合なら「恋人」は男性にしてほしいなぁという気持ちになり、混声ならばどっちの気持ちで歌っているの?とワクワクしながら聴いていました。
今度は作曲者が歌い手に配慮していて、歌い手が自由に表現できるよう、詞の独白的部分の3ヶ所を、パートの指定がされていないsolo、soliにしたようです(楽譜を見てないので推測ですが)。その部分は、各団体が様々な表現をしていました。

詩を謳いあげることは、ひとつの物語の形成です。
合唱を歌いあげることも、ひとつの物語の形成です。
各団体がどんな物語を作り上げるのか…とても楽しみにして聴いたのですが、物語を完遂した高校なし(笑)

  恋人が小さな声で囁いた
  「タラコおにぎり食べたいな」


囁いたんだよね? それにしちゃ、はっきり言い過ぎてない?
恋人は女の子なのね?(女声合唱なのに、男の子の気持ちで歌うの?)

  恋人が優しい寝言を呟いた
  「子猫の名前を考えて」


ね、寝言だよね? そんなはっきりした寝言なの?呟いたんじゃないの?近頃は呟くってはっきり言うことなの?
ええっ、さっき恋人は女の子だったじゃん、今度は男の子なの? ジェンダーフリー賛成だけど、たったの数行で前の恋人と別れちゃったの?

  子猫の名前を思いついたよ

この部分はカギカッコがないので、この詩を読んでいる人の声なのだけど。。。
詩を読んでいる人と恋人の声と迷った感あり。(両方という、とりかたも否定しない)
女声は、そのまま女声でOKなんだけど。
混声は、恋人が女の子なら、男声で終わってほしかった…。
全体を男女で歌っているので混合で終わりで良いともいえるが。
できれば、恋人が女の子設定にしたら、詩を読んでる主人公は男の子。恋人が男の子なら、詩を読んでる主人公は女の子。はっきりしたひとつの物語を作ってほしいって思う。

さて、合唱ではなく詞を分解してみよう。
穂村氏は良く考えてこの詩を作っていて、男女関係なくテーマである「ピース♪」を受け止められるように書いているのだが…。
この詩の中で、詩を読んでいる主人公は平和な世界に身を置きながら、一触即発で世界が変化してしまうこと気が付いていて、そのいわゆる「不安」をまるで現実のように感じている。その主人公のそばにいる「恋人」の存在は平和の象徴や現実の象徴として出てくる。この恋人の存在は現実か、それとも夢の産物かわからない。ただ、主人公が現実に戻る、「我に返る」ための存在として出てくる。
この現実なのか現実ではないのか、現実ではないからそれは本当にないことなのか、そんな微妙なところを穂村氏はじっくり子供たちに考えてほしかったのかなぁと思う。
いくつか、うーん、と思う表現はあるけれど、(特にホットケーキ。いまどきはパンケーキだろ?)詩の作り方としては好きです。

順番に思ったこと書き連ねます。

  コンビニの棚は空っぽ
  おにぎりもサンドイッチも消えている


この詩を見た時に、すぐに思い出したのは震災時。
コンビニの棚が空っぽだけならまだいいじゃん…と思うので少々ムカついた表現だったけど、あの時、確かに被災地を優先して東京のコンビニにはなにもなかった。
それでいい、被災地に協力できてるかなって。みんなそう思ってた。

  夢の中の景色みたい
  目覚めたいのに目覚めない


2回出てくるこの2行。
単なる夢か、それとも何かの比喩かを考えさせる言葉。
非現実的な言葉が並ぶこと、第二パラグラフから、現実および比喩を詩として書いていると読み解く。
現実のことであれば、根底にある、テーマ「ピース♪」も読み解きやすくなる。

  恋人が小さな声で囁いた
  「タラコおにぎり食べたいな」
  〈非常口〉の緑の人は逃げ出しちゃった


恋人の声が現実に引き戻す。(恋人の声は、実は自分の声かもしれない)
お腹が空いて、でも今はどうしようもないよねって思ったから「〈非常口〉の緑の人」イコール「自分」は逃げ出しちゃった。

  透明な銃を光らせろ

穂村氏が解説してたんだけど、スピーカーの向きが悪くて良く聞こえなかった。とりあえず私の勝手な解釈。
何かを一生懸命やり遂げようとする時、何かと戦っているよね。
相手は時間かもしれないし、分量かもしれない、知識かもしれない。
相手を透明な銃で撃って生き残れ(やり遂げろ)。
夢の中じゃない、それって現実。

  恋人が優しい寝言を呟いた
  「子猫の名前を考えて」
  でも銃声が激しくてよくきこえないんだ

恋人も、その寝言も「平和」の象徴。「銃声」は思い悩む自分自身。
ほんのちょっとしたことに応えられない、せっぱつまった(と思っている)自分。

  恋人は眠っている
  その血を吸った蚊が青空を漂っている
  私は寝顔を見ている
  恋人は夢を見ている
  暗黒の宇宙の彼方で星が燃えている

  ホットケーキにメイプルシロップ
  ホットケーキにメイプルシロップ

  子猫の名前を思いついたよ


このあたり、超妄想してみる(笑)
「あー。あちー。今日は良く晴れてるなー。あー、こいつまだ寝てるし。あ、蚊飛んでる。刺されたくないなぁ。…こいつ刺されたな、腕掻いてる。…かゆくても起きないのな?良く眠ってる…。あっちーなー。太陽元気だな。あ、お腹すいてきた。ホットケーキ食いたいなぁ。こいつホットケーキ焼くのうまいんだよな。起きねぇかな。あ?メイプルシロップ残ってたっけ?予備あったっけ?うっわーメイプルシロップなしのホットケーキなんてないなー。・・・。こいつなしの俺もないなぁ。ふわふわホットケーキ・・・。よーし、猫の名前はメイプル!」

とまあ。そんなこんな。
高校生たちはどんな物語を歌いながら思ったのだろう?
少なくとも、テーマ「ピース♪」が願ったように、自分のこととして受け取ったのだけは確かだろう。


実際の詩の並び
「メイプルシロップ」

  コンビニの棚は空っぽ
  おにぎりもサンドイッチも消えている
  夢の中の景色みたい
  目覚めたいのに目覚めない
  恋人が小さな声で囁いた
  「タラコおにぎり食べたいな」
  〈非常口〉の緑の人は逃げ出しちゃった

  ホットケーキにメイプルシロップ
  ホットケーキにメイプルシロップ

  透明な銃を光らせろ
  周りではばたばた人が倒れてる
  夢の中の景色みたい
  目覚めたいのに目覚めない
  恋人が優しい寝言を呟いた
  「子猫の名前を考えて」
  でも銃声が激しくてよくきこえないんだ

  恋人は眠っている
  その血を吸った蚊が青空を漂っている
  私は寝顔を見ている
  恋人は夢を見ている
  暗黒の宇宙の彼方で星が燃えている

  ホットケーキにメイプルシロップ
  ホットケーキにメイプルシロップ

  子猫の名前を思いついたよ

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