BIWA-YOU

『琵琶謡』とは、徒然を謡うこと。写真と、日々思うことを。      そして、できるならば詩や小説も書き綴りたいと思いつつ・・・。

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Black & Red Stars ―帰還― 1-(3)

(3)
既に用意されていたサラダにボイルしたウィンナー、そして一旦吹き零れたオニオンスープで朝食がはじまると、子供たちは一心不乱に食べはじめた。
その姿を眺めながら、メリサはスープを一口すすった。
胃の中に温かいスープが落ちていく。
メリサは目を閉じた。胃の中で広がっていく栄養を自分の身体が必要としているのを意外な気持ちで感じていた。目を開けるとリックと目があった。
彼はメリサに頷きかけると、すぐに子供たちに目を移した。
いま自分が感じている多くの反応を、この場にいる者すべてが経験したことがあるだろう、とメリサは思った。記録ではリックは3ヶ月前に目覚め、子供たちはコールドスリープの状態をリックの目覚めに合わせて解除されたのだ。
(何のために彼の目覚めに合わせたの?)
ふとメリサは自分が思った疑問に、疑問を持った。
隣のウィンの口元をナプキンで拭いてあげていた彼女に、正面に座っていた黒い肌に短いカーリーヘア、子供たちの中で一番背が高くそして細身なクリスが話しかけてきた。
「あのね、お姉ちゃん。ひとつお願いしてもいい?」
「ええ」メリサは微笑みつつ頷いた。
「いままでねサッカーってパスとかドリブルの練習しかできなかったの。試合したいなぁって思ってたんだけど。3対3なら、少しは形になるでしょ?」
メリサはにっこりと笑って「いいわよ」と答える。
その言葉にクリスの隣のヒューイが歓声をあげた。
「わーい。やっと試合ができるねクリス。あ、お姉ちゃん。僕も僕もお願いがあるんだ」
「なあに?」
今度はヒューイに顔を向ける。
「あのね、お兄ちゃんって僕たちが寝た後にいろんなテストや訓練を受けているんだって」その言葉にリックはヒューイに顔を向けた。「“ナイト(騎士)”になるためにいろんなことを学んでいるんだってさ。お姉ちゃんも“ナイト”になるんでしょ?」
リックは目を見張ってヒューイを見つめた。
「“ナイト”ね」メリサはリックの様子を見て、笑いそうになるのをこらえた。「ふふ、そうね。そうなるわね」リックは前髪を片手でかきあげ頭を抱えていた。
メリサの返事にヒューイは頬を真っ赤にして瞳をきらきらさせた。
「じゃあさ、じゃあさ。二人で剣の、えっと“手合い”って言うんだっけ?練習のこと?」
「え?」リックとメリサは同時に声を出した。
リックは顔を上げてヒューイを見つめる。二人に見つめられてヒューイは少しもじもじしながら続けた。
「お兄ちゃんに教えてってお願いしたけど、僕たちはまだ小さいから教えられないって…。お姉ちゃんも訓練するなら、その様子を見せ欲しいんだ」
そのヒューイの言葉にリックは小さく首を振りつつ再び片手で頭を抱えた。メリサは再び笑いをこらえながら「どうして剣なの?」とヒューイに尋ねた。
「“ナイト”って円卓の騎士と一緒でしょ? 僕の大好きな話なんだキング・アーサー。お兄ちゃんがね、自分を守れなきゃ、他人も守れないから訓練するんだよって、教えてくれたんだよ。円卓の騎士みたいに強くならなきゃってね。だから僕も“ナイト”になるんだ」
うれしそうに説明するヒューイの後ろでは、リックが頭を抱えたままメリサを睨んでいる。深い蒼の瞳が射すようだ。
(断れってことよね…。ふふ。この人の睨み顔はちょっと怖いわね…)
そんな感想を持ちつつも笑いがこみあげてくる。
「そうねぇ、私もあなたたちと一緒でいろんなことを学ばなきゃならないの」
嘘をつくことになるな、と彼女は思った。実際には武器という武器すべてを、すぐに扱えるように調整されているのだから。ただ慣れるための訓練が必要なだけだ。その訓練を見たいと言われたことになるのだが、リックは子供たちにそれを見せたくないようだ。
「だから、あなたたちに見せられるのはいつだか分からないわ」
メリサは首をかしげると残念そうに肩をすくめた。
ヒューイはメリサの様子に寂しそうな顔になった。
「そっか、そうだよね。お姉ちゃんは目覚めたばっかりだったよね…」
ヒューイだけでなく、子供たち全員が急にシュンとして食事の手が止まってしまった。
「乞うご期待、かしら? 残念ながら約束はできないけど」
メリサが茶目っ気たっぷりにウィンクすると、子供たちはほっとしたように微笑んだ。
メリサは前かがみになっていた姿勢を正すとリックを見た。彼はもう睨んではいなかったが、眉間にしわがよったままだ。
(そういう返事をしたあなたがいけないのよ)
リックに苦笑を返すと彼はそれに気付き、メリサから目線を外すと再び前髪をかきあげ、小さくため息をついた。

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